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頭痛について

片頭痛は付き合う病気から治す病気へ

片頭痛治療の変遷について

 頭痛に悩む人は国民の4分の1と言われ、10人に一人は片頭痛を抱えているとされています。片頭痛が慢性化すると、寝込む日も多くなり、仕事や学業に大きな支障をきたし、日常生活の質そのものが低下してしまいます。その経済的損失は年間3000億円とも言われ、国民病の一つとして挙げられています。

 

 片頭痛はうつやアルツハイマー病、脳血管障害との因果関係が示されるようになり、解決の重要性は言うまでもない一方で、これまで多くの片頭痛患者が治療を諦めてしまっているという事実がありました。医療機関にかかっても決定的な治療手段がなかったことも理由の一つとして挙げられると思います。しかし、近年の治療薬の開発進化は目覚ましく、「付き合う病気から治す病気へ」と時代が変化し、片頭痛治療が大きくパラダイムシフトしていると感じています。

 

 特に数年前から使えるようになったCGRP製剤という注射薬の威力は抜群で、過去20年近く慢性片頭痛に対してあらゆる急性治療薬、予防薬、漢方薬を使っても効果が一時的で、毎日のように頭痛に苦しんでいた患者さんたちが、「寝込む日がなくなった」「薬漬けの毎日から内服薬を使用しなくなった」「外出が楽しくなった」など、頭痛の日常から解放されただけでなく、生活が明るく生き生きと前向きになっている患者さんたちを目の当たりにして、医学の進歩の素晴らしさを実感しています。また、副作用がほとんどないことも大きな特徴です。

 

 頭痛は時に危険な病気が含まれているため、原因を調べることも必要ですが、悩ましい片頭痛に対しては積極的に治療を考えていくべきだと考えます。片頭痛治療は、自分に合った急性治療薬(トリプタン製剤、ジタン製剤)や内服予防薬、漢方薬などを選び出すことから始まります。しかし、これらの治療薬や予防薬でコントロールできず、月に3日以上寝込むような場合は、先に紹介したCGRP製剤の使用を検討することも良いかもしれません。

 

 最新の知見によれば、長期間片頭痛を患っていると、脳のある部分(中脳水道周囲灰白質)に鉄が沈着し、自らの痛みをコントロールする機構が崩れてしまうことが分かっており、早期治療の必要性について関係学会でも積極的に言及されています。また、片頭痛治療は今後もさらに進化していくものと期待されています。